知識と知恵

 学校教育がゆとりから基礎・基本の徹底へと変わったと言われます。今まで,いつの時代にも,基礎・基本は徹底して指導してきているのですが,改めてクローズアップされてきました。

 その背景には,子どもたち一人一人の学力の差が大きくなった,ということが挙げられると思います。家庭用ゲーム機の普及により,家庭学習の時間に大きな差が出てきているのです。また,テレビやゲーム等によって夜更かしするようになった子ども達は,十分な睡眠時間を確保できずに,すっきりしない頭で学校に通っているという現実もあります。

 また,基礎・基本を徹底するために,総合的な学習の時間を削減しようという動きもあります。総合の時間を,他の教科の習熟に充てる学校も出てきているようです。

 私は,教科の学習で身につける基礎的・基本的なことがらは「知識」だと思うのです。そして,教科等の学習で身につけた「知識」を,生活に生かすレベルまで高めた時,「知恵」と呼ばれるようになるのです。「知識」を「知恵」にまで高めるための時間が「総合的な学習の時間」なのではないでしょうか。

 教科等の学習で,基礎的・基本的事項を身につけたあとは,いきてはたらく力にまで高めることが大切なのです。計算練習,漢字練習を十分に行い,力を身につけた子ども達は,考える余裕を持つことができるのです。考えることによって「知識」は「知恵」へと変化していくのです。

 人間として,社会で生きていくためには,「知恵」が大切です。今の時代,機械の力を借りれば「知識」はすぐに手に入ります。子どもの今の姿ばかりに目を奪われないで,10年後,20年後の姿を思い描いて,学習指導に当たる余裕が欲しいと思っている今日この頃です。

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